ナラ・レオンが歌ったブラジルの古典楽曲のオリジナルを集めたCD

V.A. / Cancoes da antiga que Nara Leao era apaixonada

V.A. / Cancoes da antiga que Nara Leao era apaixonada

ナラ・レオンは一般的にはボサ・ノヴァの歌手と言われていて、実際「ボサ・ノヴァのミューズ」みたいな通称まである。しかし俺は以前からナラについてはあまりそういうふうには思ってこなかった。

確かにボサ・ノヴァの黎明期に彼女はいたし、ジョビン作品を歌った『美しきボサノヴァのミューズ』というアルバムもある。しかし彼女の他のアルバムはあまりボサ・ノヴァを感じてこなかったし、むしろMPB(Música Popular Brasileira=ブラジルのポピュラー・ミュージック)のほうが強く感じる。

そんなナラ・レオンは生涯で録音した289曲の中で、ボサ・ノヴァ誕生以前のブラジルの古典歌謡曲を37曲取り上げてきた。外部のプロジェクトで録音したものを含めると49曲にもなるという(ライナーノートより)。その中から25曲をピックアップしたのがこのCD『ナラ・レオンが愛したブラジルの古謡』である。

ジャケットにナラ・レオンの姿とタイトルにも彼女の名前はあるが、彼女の歌は1曲も入っていない。すべてカバー元のオリジナル曲が集められている。要はSP時代に吹き込まれた曲ばかりってことだ。日本で例えるなら戦前戦後の歌謡曲を集めたようなものだろうか。

しかしちゃんとリマスターされてとても良い音で聴けるし、何よりもライナーノートが秀逸すぎる。1曲ずつ丁寧に解説がしてあるし、ナラが各曲をいつ取り上げたのかや背景も書かれていて、もはや1冊の本みたいでもある。

そして収録された25曲はいまでは伝説といわれる歌手が多く登場し、ブラジルの音楽史を辿っているのに等しい内容だと思わせる素晴らしいコンピレーションだ。これだけ集めるのは結構な労力が伴うので、こういうのはとても有難い。

俺はすぐにSpotifyで、このCDに収録されているナラ・レオン・バージョンを集めてプレイリストを作成した。何曲か見つからない曲もあったが、これでいつでも聴き比べられる。

決して万人に勧められるものではないが、こういうコンピレーションはすぐに手に入りづらくなりそうだから、ブラジル音楽に興味のある人だったらぜひとも抑えておきたい1枚だと言わせてもらいたい。

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