【イマコレ】ピーター・フランプトン / フランプトン・カムズ・アライヴ!

Peter Frampton / Frampton Comes Alive!
Peter Frampton / Frampton Comes Alive!

※イマコレ=「今ごろコレ聴いてる」「今まさにコレが俺にキテル!」的なアルバムなどをピックアップして紹介します。

『フランプトン・カムズ・アライヴ!』は、ピーター・フランプトンの1976年の大ヒット作で、彼を一躍スターにしたアルバムである。それまでの彼は、60年代にザ・ハード(The Herd)、その後のハンブル・パイ(Humble Pie)とキャリアはあったものの、ソロとなってからは鳴かず飛ばずの状態が続き、ソロ4作目(間に「フランプトンズ・キャメル」名義で1枚出ているので5枚目と数えることもある)としてリリースしたのがこのアルバムだった。アナログでは2枚組だったのだが、リリース前は1枚モノとしてリリースされる予定であった。その際の収録予定曲は”All I Wanna Be (Is By Your Side)”, “It’s a Plane Shame”, “Jumpin’ Jack Flash” 他1曲がA面、B面が”Lines On My Face”,”Do You Feel Like We Do” というものだったらしい。それを当時のA&Mレコードの社長に聴かせたところ「もう1枚は?」と言われたことから2枚組でのリリースが決定したという。結果的には全米で800万枚(400万セット)を売上げ、1976年当時、それまでキャロル・キングの『つづれおり』が持っていた600万枚という記録ををいとも簡単に上回ってしまったのである。

俺はこの『フランプトン・カムズ・アライヴ!』を18歳の時(1986年、つまりリリースから10年後ってことですね)に中古レコードで購入した。その時からこのアルバムが好きでたまらないのだが、2001年には25周年のデラックス・エディションがリリースされ、新たに4曲が追加され、曲順も当時のセットリストに準拠したものとなった。とりあえず曲を順番に紹介。

01. Something’s Happening
何やら早口な司会者のアナウンス、「ミスター・ピーター・フランプトン!」の紹介で沸く会場。そしてこの曲はオープニングに相応しい。

02. Doobie Wah
「ハロー、サンフランシスコォッ!」と挨拶をするピーター。そして「ちょっとファンキーに行こうか」と言って始めるこの曲は、タイトルにもあるように、ドゥービー・ブラザーズを意識して書かれた曲。確かにドゥービーっぽいノリである。

03. Lines On My Face
一転してスローな曲。鳴きのギター・ソロが美しい。個人的にこのアルバム中最も好きな曲。

04. Show Me The Way
アルバムリリース当時にシングルカットされ、これもセールスを伸ばす要因となった。もし『フランプトン・カムズ・アライヴ』がアナログ1枚ものとしてリリースされていたら、この曲のライヴ・バージョンは存在していなかった。

05. (It’s a) Plane Shame
「ロックンロールはどうだい?」と紹介して始まる。歌詞に出てくる地名をライヴが行われているサンフランシスコに置き換えて歌っていて、そこで聴衆が大いに湧く。

06. Wind Of Change
ここからしばらくはアコースティック・セットが始まるが、まずは記念すべきソロ1作目のタイトル曲から。小品ながら印象に残る曲だと思う。

07. Just The Time Of Year
今回の編集で初めて収録された未発表パフォーマンス。コーラスの部分で「さあ、一緒に(歌って)」と促すピーター。ハードなロックからこういう味わい深い曲までこなすところが彼の魅力である。

08. Penny For Your Thoughts
従来の盤だとC面の冒頭、この曲に続いて”Money”が始まるからてっきりペアかと思っていたのだが、今回の編集により別個に演奏されていたことが判明。1分強のインストゥルメンタル。

09. All I Want To Be (Is By Your Side)
アコースティック・セットで最も盛り上がっている曲。よく聴いてみるとオーディエンスも合唱している。最初にこのアルバムを聴いた高校生のときに、なんて温かみのあるライヴなんだろうと思ったことがある。このライヴの時点では成功というにはまだ及ばないという状況だったろうに、そんなことは微塵も思わせない盛り上がり方。何も売れてるものばかりが良いものではないのだなというのを、改めて実感させられた曲だ。

10. Baby, I Love Your Way
80年代、Will To Power というユニットがカバーしてスマッシュ・ヒットを記録していたが、このヒットのおかげで、当時低迷していたピーターが音楽活動を再開できるようになった・・・なんて、よくよく考えるとちょっと悲しいニュースもあったが、この曲はしっかりと歌い継がれていくべきだ。こんなにキャッチーな曲を70年代クラシックとして封じ込めるのはもったいない。

11. I Wanna Go To The Sun
歌い出し、ちょっと低めに「うぇーる(well)」と発する部分がかっこいいね。この曲から再びエレキギターを持ち、後半のギター・ソロは盛り上がるね。

12. Nowhere’s Too Far For My Baby
未発表2曲目。何故この曲をオリジナル『カムズ・アライヴ』から外したのだろう?スタジオ録音よりもよりハードになっていて、まさにライヴ向けの曲といった感じ。

13. (I’ll Give You) Money
レッド・ツェッペリンを意識して作ったハード・ロック。確かに『Ⅳ』とか『フィジカル・グラフィティ』あたりに入っていてもおかしくないような曲である。

14. Do You Feel Like We Do
このアルバムが出た当時、ロッド・スチュワートがこの曲をかなり気に入っていると言っていたらしい。哀愁を帯びたようなイントロではじまり、途中キーボード・ソロを挟んで、トーキング・モジュレーターなる道具を使ったギターと歌が披露される。後のヴォコーダーみたいなもののようだが、今も彼のトレードマークとなっているね。

15. Shine On
ハンブル・パイ時代の曲。流れ的にはここからアンコールって感じがする。

16. White Sugar
まさか前の曲から続いて演奏されていたなんて思わなかった。これも未発表曲(3曲目)。

17. Jumping Jack Flash
そう、あのローリング・ストーンズの曲。ピーターはアレンジを変えて、スタジオ録音も残している。実は俺はこちらを先に聴いていて、本家(ストーンズ)の方が後だった。ギター・ソロが素晴らしい。

18. Days Dawning
これは1975年にFM局でのスタジオ・ライヴを収録したものなので今までの雰囲気とはちょっと違っていて、これだけがボーナス・トラックのように感じられる。

それまで大きなヒット曲を持たなかったピーター・フランプトンがなぜこのライヴ・アルバムで大成功を収められたのか?プロモーションが良かったのか?運が良かったのか?時代が求めていたような音楽だったのだろうか?などといろいろ考えてしまうが、もっと単純な理由かもしれない。

レコードから「ライヴ感」がひしひしと伝わってくるからだと思う。ロックのライヴ・アルバムは数あれど、ここまでステージとオーディエンスの雰囲気を見事に捉えているものは少ないのではないだろうか?このアルバムの成功の鍵を握っていたのは、地道にライヴ活動をしてきたピーターを支えたオーディエンス達だということだ。ピーターの一挙一動に歓喜し、一緒に歌い、反応が実に素直に感じられる。そんなオーディエンスに支えられたピーターの歌とギターもここでは実に素晴らしい。このアルバムに収録された曲のスタジオ・バージョンがどれもどこか物足りなさがあるのとは正反対に、ピーター・フランプトンというミュージシャンの最高の瞬間が記録されている。そういう部分がシングルカットされた “Show Me The Way” などを通して多くの人の心を掴んだに違いない。俺もその1人だ。

セールス、キャッチーな曲の数々、そしてピーターのハンサムなルックスが災いして、ロックを聴きこんだ人ほどこのアルバムを軽視しているとは思うが、優れたライヴ・アルバムであることは間違いないし、聴いたことが無ければ一度は聴くことを勧めたい。

※これは昔持っていた個人サイトにて2001/5/29に書いたものを、2005/1/1に改編し、さらに今回少し修正しました。ところどころ当時書いたままのものがあるので読んでみて若干違和感あるかもしれません。