Tears for Fears / Songs From The Big Chair (Super Deluxe Edition)
ティアーズ・フォー・フィアーズが1985年にリリースした2ndアルバム”Songs From The Big Chair(邦題:『シャウト』、以下『シャウト』で表記)”がリリース30周年も目前に、30周年記念盤としてリイシューされた。通常の1枚のアルバムと、2枚組のデラックス・エディション、そしてCD4枚+DVD2枚からなるスーパー・デラックス・エディション、さらには180gのアナログ盤という4種類がある。このアルバムは80年代を中学生高校生で過ごした俺にとっては最も好きな1枚であるにも関わらず、手元にあるのは当時買ったアナログ盤と90年代に出たCDのみだった。1999年にはボーナストラックを含んで再発され、さらに2006年には2枚組のデラックス・エディションとして再発されてきたが、これらは持っていなかった。そんなわけで今回は6枚組のスーパー・デラックス・エディションを購入した。
『シャウト』は1985年2月にリリースされ、アメリカでは”Shout”、”Everybody Wants To Rule The World”が1位となり、アルバムも1位となっている。シングルのB面にはアルバムに未収録の曲がカップリングされたり、12インチシングルも多数リリースされた。今回のボックスではそれらがまとめられているのが嬉しい。
Disc1は『シャウト』全曲はもちろんのこと、シングルB面曲が含まれた17曲を収録。B面曲はインストゥルメンタルが多いが、これらを聴くと彼らがデヴィッド・ボウイやジョイ・ディヴィジョンに影響を受けたというのも頷ける。ボウイの『ロウ』に入っていてもおかしくないタイプの曲もあるしね。アルバムは今聴いてもちっとも色褪せてないし、完璧な作りだと思う。特にアナログではB面にあたる”I Believe”からの展開は、「最強のB面」のひとつだと思っている(他にはポリスの『シンクロニシティ』などもそう思っている)。
Disc2はシングルでリリースされた曲のエディット・バージョンを中心に収録。注目すべきは1曲目の”The Way You Are”で、この曲は1stの”The Hurting”の後にシングルとしてリリースされたものだが不発だったようで、これを受けてカート・スミスとローランド・オザーバルの2人は新たな音づくりを構想し、出来上がったのが『シャウト』という、言うなれば方向転換のきっかけを与えてくれた曲でもある。他には”I Believe(A Soulful Re-Recording)”もぜひ聴くべきバージョンだと思う。
Disc3は12インチシングルなどで出たエクステンデット・バージョンたちを収録している。これらを聴いてみると、いったいシングル1曲につき何バージョン作成したのだろうと、確かに当時は1曲をいろいろな形態でリミックスしてリリースしていたんだけど、改めてそのバリエーションに驚いてしまう。このボックスの4枚のディスクに”Shout”だけでも10バージョンあったりするのですよ。当時聴いたことがあるのもあれば、たぶん今回初めて聴くものもある。しかしこうやってまとめてもらえるのはありがたい。
Disc4は未発表テイクを集めている。BBCでのセッションから3曲、カナダのトロントでのライヴから6曲(ここに1stからの”Memories Fade”が入っているのはある意味サービスか?w)、そして初期テイクなど。これはもうスーパー・デラックス・エディションならではの特典と思っていいですね。”Broken (Early Mix)”はサックスなどが後半に入っていて、アルバムとはまた違った印象を受けます。
Disc5は今回の個人的な目玉!5.1chのサラウンドを収録したDVDオーディオ。そうです、これが聴きたくてスーパー・デラックス・エディションを選んだと言っても過言ではありません。『シャウト』はもとから重厚なアレンジがされているので、サラウンド向きだなと思っていましたが、いやぁ、本当に素晴らしいです。言葉でうまく表せないのがアレですが。なかでもアルバム中ベスト・トラックだと思っている”The Working Hour”は重厚さが軽減されているものの、音の広がりとローランドのヴォーカルがまるでライヴであるかのように聴こえて、このサラウンドの中でもベスト・トラックだと感じます。欲を言えば、シングルB面曲たちもサラウンド化してほしかった、あと”I Believe(A Soulful Re-Recording)”も。
Disc6もDVDでこちらは映像。このアルバムのメイキングである”Scenes From The Big Chair”と、プロデューサーであるクリス・ヒューズへのインタビュー、そしてシングルカットされた各曲のプロモーション・ビデオと、Top Of The Posへ出演した時の映像など。PVは懐かしいですね。いかにも80年代って格好が今では笑ってしまいますが。惜しむらくは輸入盤なので字幕がないこと。字幕があれば”Scenes From The Big Chair”も率先して見るのですが、実はまだ見ていません。
30年前に聴いたアルバムが、こういう形で聴くことができるなんて当時はもちろん思わなかったし、10年ぐらい前でも思っていなかったから、長年音楽聴いてきて良かったよなぁって思いますね、ホント。ティアーズ・フォー・フィアーズと聞いて「懐かしい」で終わらせてしまうのは非常にもったいないし、一旦は彼らも仲違いして別々に活動していたけど、2000年過ぎてからまた一緒にやっているし、再結成アルバム”Everybody Love A Happy Ending”もとても良い内容なので、早く次のアルバムを聴きたいですね。