キリンジの「悪玉」で泣く私

キリンジ / 3
キリンジ / 3
俺は普段、歌詞なんてどうでもいいと思っている。
「歌」も音楽の一部という感覚で普段聴いているから、
歌詞で「感動した」とか「泣く」なんてことは、俺にはまずないだろうと。
だけど、聴いていてついホロリとしてしまう曲があった。
キリンジの『3』に収録されている「悪玉」という曲がそれ。
歌詞を転載するとカスラックがうるせえから、
どんな歌詞なのかは以下を見ておいて欲しい。
musico キリンジ -悪玉-

この曲の主人公は八百長専門の悪役レスラー。
恐らくかませ犬的な立場で、主役級のレスラーを引き立てているのだろう。
何せ「二流で無名のヒール」だ。
いつもしょうもない反則をして負けて罵声を浴びせられているような
イメージが曲の最初のほうでうかがえる。

しかし彼は引退を考えている。彼の「息子」のために。
そりゃそうだろう、いつも反則負けしているカッコ悪い父親だ。
まだ幼いであろう息子はきっと友達からもいじめられているかもしれない。
我が子からも蔑まされているこの仕事をいつまでも続けるわけにはいかないと。
だが、引退を決めたからには一花咲かせようと考える。

それにしても、決めセリフである
「破壊の神シヴァよ、血の雨を降らせ給うれ」とは
なんともダサいセリフだろうかw
それでいつも反則負けw
そして「因縁のカード」となる試合。
ってことは、以前も戦ったことのある相手で、
彼が負けてあげたおかげで今では相手はきっと人気者なのだろう。

これ以上息子に軽蔑される自分からおさらばするために、
自分の本当の実力を見せるための相手としてはうってつけ。
入場テーマ曲と「破壊の神」のセリフ。
いつもだったらもらった花束をメチャメチャして凶暴さをアピールするのだろうけど、
今回はそんなことをする必要もないし凶器もいらない。
「マイクよこせ早く」とは試合前のマイクパフォーマンスだろう。
最後の試合を前に彼が何を言ったのかは曲からは分からないけど、
いつもより闘志のみなぎったセリフを吐いたのではという想像がつく。

そして試合は誰もが予想していた展開と違い、彼のフォール勝ち。
当然、主役級のレスラーが勝つはずの試合でのどんでん返し。
プロモーターとしてもあり得ない結果に席を立つ。
そして観客は、彼が勝ったことで今までの試合が八百長だということに気づく。
いや、最初から知っていたかもしれない。負けて当然な彼が勝ったことに不満を漏らす。
試合会場はいつもと違う罵声が飛び交っている。
しかし、彼の息子だけはこの結果に笑顔で喜んでいる。
いつも無様な負け方をしている父親が勝ったことに。
彼もそんな笑顔の息子を見つけ、早く息子に言いたいのだろう。
「どうだ!父さんは本当は強いんだぞ!」と。
それが最後の「マイクよこせ早く」なんだろうと。
そんなシーンを想像するとついホロっとしちゃうんだよな。

キリンジの曲の歌詞って割と難解な気がするんだけど、
この「悪玉」という曲は風景が思い浮かべやすいからなおさら。
本当に良い曲だ。
というよりもですね、『3』は捨て曲無しだよね。
そんな訳で、のちほど明日リリースの新譜『BUOYANCY』を買いに行きますよ。

タイトルとURLをコピーしました