YMOの『テクノデリック』が好きな理由が今わかったという話

YMO / テクノデリック

YMOの1981年リリースの『テクノデリック』。 俺はリリースされた当時から聴いているアルバムで、YMOのアルバムでは最もこれが好きだ。

小学生のころに「テクノポリス」、「ライディーン」がヒットして子供にもウケたのだが、 このアルバムと前作『BGM』ではそんなミーハーなファンを切り離すことをした印象がある。

実際、『ソリッド・ステイト・サバイバー』が大好きだった当時の友人に、 FM番組から録音した『テクノデリック』の曲を聴かせても反応は鈍かった。「こんなのがいいの?」と言われるほど。当時の俺はオマエ普段YMO良いって言ってるじゃんと思ったものだが。

90年代になってYMOのアルバムがCD化されたときにも最初に買ったのがこのアルバムだったが、 その時に聴きなおして、やはりこれは『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』とは全然違うなと思った。 全体を通してダウナーな感じが、ミーハーな人にはウケないわと思った。 こんな最高なアルバムなのにね。

俺はずっとこのアルバムが好きな理由が、そういうダウナーな雰囲気や音楽的にもより構築された感じが良いんだろうと思っていた。ビートルズでいうと初期よりも後期、デヴィッド・ボウイだと『ジギー・スターダスト』より『ロウ』。 ウェザー・リポートだと『ヘヴィ・ウェザー』より『ミスター・ゴーン』みたいなのと同じ。 つまりはそういうことなんだろうとずっと思ってきた、30年ぐらい。

だけど先日このアルバムを聴いてふと気が付いた。1曲目の「ジャム」のドラムがとても人間臭い。 そう、『テクノデリック』をテクノのアルバムだと思っていたのだけど、実は違うじゃんと。 音はそうだけど、ドラムは幸宏さんだぜ!と今さらながら思ったわけだ。

4曲目の「京城音楽」のドラムもそう、とても生々しい。 本当に今さらだけど、いま多くあるテクノと違って3人の演奏なんだよね。 だから『BGM』よりも生楽器の多いこっちを好んで聴いているのだと。

ところで、このアルバムをよく「世界初のサンプリング・アルバム」と言うけど、 実は意外なところでサンプリングという技術が先に使われていたようだ。

俺の好きな、スティーリー・ダンの『ガウチョ』がそうで、 エンジニアのロジャー・ニコルスが「ウェンデル」というドラムマシンを開発していて、 『ガウチョ』で使用しているそうだ。ただこいつはドラムの音を補正するぐらいのもので、 やはり人の声とか何かの音をサンプリングして曲に取り入れたのは『テクノデリック』ってことになるね。