ピンク・フロイド『狂気』の初演を聴く

Pink Floyd

ピンク・フロイドが1973年に発表した『狂気』は、アルバムがリリースされる1年も前からライヴの場で形を変えながら作られてきた。その最初期はアルバムとは全然違う曲もあり、CDで聴きなれてしまうとかなりの違いにビックリする。

初演は1972年1月20日、イギリスのブライトンという場所で、今ではブートレグでその様子を知ることができる。

1972/01/20 Brighton, England
01. Speak To Me
02. Breathe
03. The Travel Sequence
04. Time
05. Breathe (Reprise)
06. The Mortality Sequence
07. Money
08. Atom Heart Mother
09. Careful With That Axe, Eugene
10. One of These Days
11. Echoes
12. A Saucerful Of Secrets

これが1/20のセットリストだったようだが、『狂気』を聴いたことがある人なら、このセットリストを見ておかしいと思うに違いない。7曲目の”Money” の後が”Atom Heart Mother” になっている。本当だったら、8曲目は”Us and Them” と続くはずなのに。

しかし、これは誤りではなく、正しい曲順のようで、『狂気』の初演は完奏できなかったそうだ。音源を聴いてみると、6曲目の”The Mortality Sequence” の後半から、音響がおかしくなってきて、”Money” の演奏開始直後に機材故障により中止となってしまう。何事もなかったかのように”Atom Heart Mother”を始めるところが、これはこれで良い。

ちなみに、『狂気』初期はアルバムでは”On The Run” という曲がここでは”The Travel Sequence” というタイトルで、曲も別物。同じくアルバムでは”The Great Gig In The Sky” が”The Mortality Sequence” という、厳かな感じのキーボードの曲となっている。

まだ全体的にぎこちない演奏で、アルバムでは多く聴くことができるSEもまだまだ少ない。何せ”Speak To Me” はまだバスドラの音しか鳴っていないような状態だ。初演こそそんな状態だったが、1年後には高い完成度のアルバムとしてリリースされているのだから、ライヴでの試行錯誤が功を奏したのだろう。

この2ヵ月後の1972年3月には来日公演を行っていて、お客さんからすればいきなり50分近くもの「新曲」を聴かされたわけだ。予定調和なコンサートに慣れきった今の時代からすると考えられない。当時を体験した人が羨ましいよ。
※ちなみにこの音源は海外のGuitars101 というところで見つけました。
夏ぐらいの話なので残っているかどうかわかりませんが、探してみてください。

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