ずっとこの手の話が続いてますがw
明日9/21はジャコ・パストリアスの命日ですね。
1987年当時、俺はロッキング・オンのちっちゃいニュースでジャコの死を知った。
でもそのときはジャコが何者かはよく分かってなくて、
そこから5年後ぐらいしてから初めて聴いたんだよな。
実は最初にジャコに接したのは音楽ではなくて本。
ビル・ミウコウスキーの「ジャコ・パストリアスの肖像」という本を
何かのレビューで見て読んでみたくなり、その後にCDを買ったという
ちょっと変わった入り方だった。
楽器をやっている人ならジャコのベースの革新性をもっと語れるだろうけど、
俺はやらないので感覚的なことしか言えない。
だけど他のベーシストとは明らかに違いベースが歌っているという印象を、
受けたことは今でも覚えているし、今もそれは変わらない。
で、最も語るべきアルバムは1stアルバムなんだろうけど、
俺はあえて2枚目の”Word Of Mouth”を断然オススメする。
Jaco Pastorius / Word Of Mouth
01. Crisis
02. 3 Views Of A Secret
03. Liberty City
04. Chromatic Fantasy
05. Blackbird
06. Word Of Mouth
07. John And Mary
1stの”Jaco Pastorius”のリリースが1976年。
ウェザー・リポートに参加し、脱退後の1981年にリリースしたのが
このアルバム。収められた7曲はどれもが大変美しいのだけど、
俺は狂気の大傑作だと思っている。
こう思ってしまうのはやはり当時のジャコの精神状態のせいだろう。
ウェザーで大成功を手に入れたジャコは音楽家としてのプレッシャーを
感じていて、ドラッグとアルコールに走ったという。
ウェザー脱退後のジャコはますます精神状態が悪くなり、
奇行が多くなったらしい。来日時にベース海に投げ捨てただの、
身体中に泥を塗りまくってステージに立ったとかあったようだし。
そんなときに作られたのがこの”Word Of Mouth”。
ジャコの念願だったビッグ・バンド形式での同名バンドによる録音だったかな。
でもこのアルバムでは実に様々なタイプの楽曲を聴くことができる。
1曲目”Crisis”はジャコの人力テクノのようなベースラインを元に、
ホーンをたくさん録音して、それを切り貼りしてできた緊張感ある曲。
2曲目の”Three Views of a Secret”は、ウェザー・リポートの”Night Passage”にも
収録された曲で、ここではトゥーツ・シールマンスのハーモニカをフィーチャー。
あれほどハーモニカが似合う曲って他にあるのか?
そこへジャコのベース、こんなに美しい曲を俺は他に知らないよ。
3曲目はビッグ・バンド形式による曲で、ジャコの作曲家としての素晴らしさを実感。
4曲目はバッハの「半音階幻想曲」をモチーフとしたベースソロで、
そのままビートルズの「ブラックバード」へと続く。
俺は本家よりもこのジャコとトゥーツ・シールマンスによる「ブラックバード」のほうが好き。
そして途切れることなくタイトル曲へ。
このノイジーなベースはまるでギターを弾いているかのよう。
組曲っぽくなっているこの3曲でジャコの持つテクニックやハーモニーやメロディが
再現され、これこそベースが歌っているって感じ!死ぬまでに聴けよと言いたい。
ラストは双子の我が子をタイトルにした長尺な曲で、イマジネーション溢れる曲だ。
こんなにも美しくて感動させられるアルバムなんだけど、
ジャコにとっては常にギリギリの状態だったのかなと想像してしまう。
その後、スティール・パンをフィーチャーした”Holiday For Pans”という
アルバムを企画していたにも関わらず、レコード会社からは拒否されてしまい、
このアルバムは死後、俺が「ジャコ・パストリアスの肖像」を読んだ
数年後にようやく陽の目を見たんだよな。
俺は完全に後追いでジャコの音楽を聴いているのだけど、
彼の音楽に出会えて本当によかったと思っている。
それ以降もいろいろなアーチストを聴いて驚きを得ているが、
この”Word Of Mouth”を聴いたときの驚きと感動を上回るものには出会っていない。
ジャコ、生きていたらどんなことをやっていたのかな。
そんなことを思いながらこのアルバムをよく聴いているよ。