Frank Zappa / Orchestral Favorites
フランク・ザッパの1979年作品である『オーケストラル・フェイヴァリッツ(Orchestral Favorites)』が40周年ということで、新装されCD3枚組となってリリースされた。
もともとこのアルバムは『レザー(Lather)』というLP5枚組の作品の中に含まれる予定だったが、当時のディストリビューターであったワーナーからのクレームにザッパは怒り心頭になり、リリース前に収録曲すべてをラジオで流すという暴挙にでた。そのため、このアルバムはリリースされず、4つのアルバムに分けてザッパの許可なく出てしまったとのこと。ちなみに4つのアルバムとは
- 『ザッパ・イン・ニューヨーク(Zappa In New York)』
- 『スタジオ・タン(Studio Tan)』
- 『スリープ・ダート(Sleep Dirt)』
- 『オーケストラル・フェイヴァリッツ(Orchestral Favorites)』
である。
そんな背景があったから、俺は実はこのアルバム自体は持っていなかったんだけど、『レザー』がザッパの死後に正式にリリースされたことから、収録されている曲は聴いているのだ。しかし『レザー』は上記4つのアルバムの収録曲がごちゃまぜになっているので、特に単品で所有していなかったこのアルバムの曲は印象が薄かった。そもそもジャケットがダサくて欲しいという気になれなかったんだよね。
そこでこの40周年盤。
ジャケットがまず新装され、上半身裸のザッパがタクトを振っているジャケットになっている。もうこれだけで「おっ」ってなるし、さらには内容も素晴らしい。ディスク1はアルバムのリマスターでボブ・ラドウィックによるもの。そしてディスク2と3は1975年9月に行われたライヴを収録している。
Disc1
- Strictly Genteel
- Pedro’s Dowry
- Naval Aviation In Art?
- Duke Of Prunes
- Bogus Pomp
- Strictly Genteel(Keyboard OD Version) bonus track
Disc2
- Show Start/ogus Pomp Explained
- Bogus Pomp
- Revised Music For Low-Budge Symphony Orchestra
- The Story Of Pedro’s Dowry
- Pedro’s Dowry
- The Story Of Rollo
- Rollo
Disc3
- Black Napkins Instructions
- Black Napkins
- Dog/Meat
- The Players
- Naval Aviaion In Art?
- “Another Weirdo Number”
- Lumpy Gravy(Extract)/Improvisation
- Evening At The Hermitage
- “A Spcecial Guest Artist”
- Duke Of Prunes
- “Absolutely Disgusting”
- The Adventures Of Greggery Peccaty
- Strictly Genteel
まずはリマスターのディスク1だが、これまでちゃんと聴いてこなかった楽曲群なわけだけどすんなり入ってきた。それはやはりバンド編成でも聴いてきた”Strictly Genteel”や”Duke Of Prunes”があるからというのもあるし、長年『200 モーテルズ(200 Motels)』を聴いてきたからオーケストラによる楽曲に抵抗がなくなってきたからだと思う。そして一部の曲にはザッパのギター・ソロも入っていて、『レザー』で何度か聴いていたにも関わらず、今回初めてギターソロが入っていることを知った。
そして何よりも、ザッパの作曲家としての才能を改めて確認できる1枚だと思った。ザッパを何年も聴いていると、バンド編成だろうがオーケストラだろうが、シンクラヴィアだろうが、どれもザッパ節のようなものを感じることができるんだよね。フォーマットが違うだけじゃんと。当たり前なんだけど。だけどザッパほど分け隔てなく聴ける音楽はそうそう無いと思うんだよね。
続いてディスク2と3。これを入手するまでは曲目からディスク2がオーケストラもの、ディスク3はバンド編成だと思っていたんだけど、どちらもオーケストラもののライヴ音源だった。とはいえディスク2の”Rollo”やディスク3の”Black Napkins”ではザッパのギターを堪能できて一番の聴きどころじゃないかと思う。約2時間のオーケストラによるライヴでロックのフォーマットじゃないから退屈しないかなと心配だったが、全然そんなことなかった。
本来の形である『レザー』が録音当時に正式にリリースされなかったのは不幸ではあるが、曲のタイプに合わせてバラ売りされたほうが正解だったと俺は思っている。だって『レザー』は大作すぎるし、曲のタイプがあちこち飛躍するからついていくのが大変だったんだよ。本来なら『レザー』でリマスターや記念盤を作るほうが道理に合ってるような気もするが、この『オーケストラル・フェイヴァリッツ』を40周年盤とすることで、ザッパのディスコグラフィの端っこの方に存在していたものが堂々と真ん中に出てきたぐらいの感覚を覚えたよ。
『スタジオ・タン』や『スリープ・ダート』だと40周年盤として膨らますことはちょっと難しそうだしね。久々に良いものを手に入れたと思っている。