スティーリー・ダンという美学

beatleg magazine

もう9年も前になるけど、スティーリー・ダンが20年ぶりのアルバム”Two Against Nature” をリリース、そして来日公演のタイミングにあわせて写真の Beatleg Magazine では彼らの特集をしました。実はこの特集で、俺は3本のアルバムレビューを書かせてもらったのです。(”Pretzel Logic”, “Aja”, “Gaucho”)

スティーリー・ダンはデビュー時こそバンド編成だったけどアルバムごとにメンバーが減り、最終的にはドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの2人だけになってしまいました。そんな状態となって彼らはどうしたかと言うと、大量のスタジオ・ミュージシャンを導入して理想の音を作り上げる方法を取るようになったのです。

今でこそよくある話だけど、1970年代後半ではまだ珍しいやり方でした。一流のスタジオ・ミュージシャンを使うからそのギャラは高く、プレイしてもらってもフェイゲンとベッカーが気に入らなければ別のミュージシャンを使うという贅沢ぶり。それが “Aja” や “Gaucho”というアルバムだったわけです。

参加したミュージシャンにとっても「どれ、誰それのレコーディングでちょっと弾いてくるか」なんて感じではなく、相当の緊張感があったのではないかと、アルバムを聴くと思います。そして、メンバーであるフェイゲンやベッカーは時には演奏には参加してない曲もあったりして、もはや誰がスティーリー・ダンのメンバーなのかが分からないような匿名性を帯びた雰囲気も魅力でした。

もはやスティーリー・ダンというグループが存在するのではなく、スティーリー・ダンという「美学」のもとにみんなが集まっているかのような感じ。そんなようなことを Beatleg Magazineには書かせてもらったものです。

文章としては稚拙で今読むと結構恥ずかしいけど、思っていることは今でも同じです。あまりここで書いたことはないけど、スティーリー・ダンは俺の最も好きなグループの1つです。いつか書いておこうと思っていたのでこの機会に。