坂本龍一の新しいアルバムが彼の誕生日にリリースされた。タイトルは『12』でその名の通り12曲が収録されている。
- 20210310
- 20211130
- 20211201
- 20220123
- 20220202
- 20220207
- 20220214
- 20220302 – sarabande
- 20220302
- 20220307
- 20220404
- 20220304
このアルバムは坂本が手術のあとの入院生活から家に戻ったあと、これが2021年の3月初旬だったそうだが、それ以降で日記のように音を「スケッチ」するようになり、そこから選んだ12曲が収録されている。曲名はそのスケッチが行われた日付がそのままつけられている。
音楽作品を創るというよりは、その日の生活を音として出したという印象で、俺的にはこれはもはや環境音楽以外の何物でもない。「よし、聴くぞ」と構えるものではなく、イーノの”Ambient 1: Music for Airports”のように、ただ流しておけばいい音だと思った。
坂本はこう言っている。
2021年3月初旬、大きな手術をして長い入院の末、新しい仮住まいの家に「帰って」きた。少し体が回復してきた3月末のこと、ふとシンセサイザーに手を触れてみた。何を作ろうなどという意識はなく、ただ「音」を浴びたかった。それによって体と心のダメージが少し癒される気がしたのだ。それまでは音を出すどころか音楽を聴く体力もなかったが、その日以降、折々に、何とはなしにシンセサイザーやピアノの鍵盤に触れ、日記を書くようにスケッチを録音していった。そこから気に入った12スケッチを選びアルバムとしてみた。何も施さず、あえて生のまま提示してみる。今後も体力が尽きるまで、このような「日記」を続けていくだろう。
坂本龍一
「少し体が回復してきた3月末」にシンセサイザーに触れてみたとあるが、1曲目の「20210310」がそれにあたるのかどうかは不明。しかししばらく音楽を聴く体力もなかったところから最初に出した音がこれなのではと推測する。
それ以降もただ音を出すだけで、スケッチの輪郭はぼんやりとしていたのだろう。それがだんだん輪郭を帯びてきたのが2曲目以降なのかなと、そんな気がする。1曲目から8か月も後だし。
いずれにしろ、これは坂本龍一の生活の記録といった趣で、我々は彼の生活環境を感じているかのような感覚になるアルバムだ。