12月11日、坂本龍一のピアノ・コンサートが配信されたので見た。坂本は2021年に直腸がんによる手術を受け、治療中であることを発表した。それ以来、長距離の移動を伴う仕事が困難であることや、長時間のライヴを行う体力がないということも発表している。そんな中でのライヴだ。
このライヴは何日かに分けて数曲ずつ演奏、撮影を行い、ひとつのショウのように見せていた。タイトルの通り、ピアノのみの演奏である。
俺は熱心な坂本のリスナーではないが、家にはアルバムが10枚近くはある。その程度の認識でこのライヴを見たのだが、まるで坂本の音楽の集大成のように思えた。
80年代90年代の彼は沖縄民謡やレゲエ、ボサノヴァなど、世界中の音楽を取り入れ、無国籍的なアルバムを何枚も出してきた。それが俺にとっては掴みにくいとも思ってきたし、逆に琴線に触れたときはとても魅力的にも感じてきた。
それがピアノのみの演奏にも関わらず、彼のこれまでの音楽をすべて包括しているかのように聴こえ、ライヴ終了後のコメントでは「新境地のように思える」と言ったのが分かるような気がした。
いつからか彼の音楽は音数が少なくなってきて、それっていつぐらいからなんだろうと考えたことがあったが、2021年にリリースされた『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020』のブックレットにある藤原帰一さんの解説に、『「BTTB」のあと、静かになり、音も減っていく』とあって、俺が思っていたよりも前だったけど、言われてみるとそうだなとも思ったり。
2023年1月17日には新しいアルバム『12』がリリースされる。治療中の中、日記のように制作してきた音楽の中から12曲を選んだというもので、今回のライヴの後に全曲試聴することができたが、どことなくブライアン・イーノの環境音楽にも通じるものを感じ、その場でAmazonで予約した。
Amazon / Tower Records / HMV
今回のライヴと地続きとなる『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020』もオススメ。この盤はとても良い。
Amazon / Tower Records / HMV
「もう少し音楽を作りたいと思っていますので」と彼はオフィシャルサイトでコメントしているが、もう少しと言わず、もっと作ってほしい。