QUEEN の低迷期を思い出す・2

Queen

10年ぐらい前に、同じタイトルでクイーンの80年代のことを書いたことがある。その時はあくまでも俺と俺の周りの反応による話だったので、いま読むと全然言い足りないと感じたので、10年たって補完しておきたいと思う。

ちなみに、過去に書いた記事を貼っておく。

80年代に入ってからのクイーンは「なんかダサい」という感じがあった。でもそれが何でなんだろうという疑問も長らくあったんだけど、それを裏付けるであろうある記事を見かけた。

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クイーンの最後の日本公演のことを書いた記事で、その中にこのような記述がある。

フレディ・マーキュリーが短髪口髭のマッチョ指向になった1980年頃からは熱心なファンが離れていく。

MusicVoice – クイーン最後の来日公演は解散寸前のライブだった! より

70年代は妖艶だったフレディ・マーキュリーのルックスが、80年代になってマッチョになってからファンが離れていったという。女性ファンなんかは特にそうだったかもしれない。しかし俺が思うにフレディのルックスが変わったことが要因ということではなく、クイーンもファンも「歳をとった」だけにすぎない。

70年代からクイーンを追っていたファンは80年代にもなると、仕事や家庭を持つようになって以前ほど音楽を聴く時間がとれなくなってしまったのではないかと。熱心なファンじゃなくて、多少かじってますぐらいの人だったら特にそうじゃないだろうか。昔あんなに夢中になっていたのに、久々に会ったら「お前まだそんなの聴いてるのかよ」みたいなこと言う奴っているでしょ?

それはともかく、フレディのルックスの変化と、ファンの年齢というのが絶妙なタイミングで交差したのではないかと思うのです。

そして、先のMusicVoiceの記事にはもう一つ重要なことが書かれている。

クイーンが6度目の来日を果たした頃はMTVが台頭し始め、イギリスからはワムやデュランデュラン、カルチャークラブといった新しいアーティストが次々とデビューしチャートを席巻していた時代。そんな中にあってクイーンは「時代遅れ」感が否めず、コンサートのチケットも完売していなかった。

MusicVoice – クイーン最後の来日公演は解散寸前のライブだった! より

そう、80年代はMTVが登場し、10代だった俺たちはデュラン・デュランとかマイケル・ジャクソンなんかのPVに夢中になっていた。そこにクイーンは “Radio Ga Ga” とか “I Want to Break Free” のPVをぶっこんできたきたものの、10代の目にはダサいものにしか見えなかったんだよね。しかもマッチョなフレディからは「おっさん」感が否めなくなって、そりゃ若いミュージシャンの方が魅力的に見えてしまうだろう。

いまとなっては60歳70歳を超えたロック・ミュージシャンはごまんといるが、80年代はまだロックという音楽はそんな歳をとっていなかったから、例えばポール・マッカートニーやミック・ジャガーといった人たちが40代になったのが80年代だった。つまりロック・ミュージックをビートルズやストーンズを起点とするのであれば、20年ぐらいしか経ってなかったのです。チャック・ベリーみたいな人たちは一様に「オールディーズ」という括りで古典芸能みたいな扱いだったから、ここではあえて話から外しておく。

そんな30代や40代になったミュージシャンは、当時PV全盛だったMTVの時代には苦戦していた。デヴィッド・ボウイも『レッツ・ダンス』が大ヒットしたけど、その後どんどん失速していったし、ニール・ヤングも何やってるかよくわからなかったし、ジミー・ペイジなんて全然パッとしなかったからね。クイーンもそういうダサい枠に入れられてしまったのですよ。そりゃ若くてカッコいい方がPV見るほうも楽しめたからね。自分で書いていてなんだけど、80年代のMTVとPVの力ってとんでもなかったなと改めて思う。

くどくどと書いてしまったが、つまりクイーンが80年代に低迷したなと感じていたのは、要するに「ファンが年齢的に離れていった」のと「中年ミュージシャンに魅力を感じない」ということだと、俺は思っている。

いまでこそ、”Radio Ga Ga” が収録された『ザ・ワークス』というアルバムや、『カインド・オブ・マジック』というアルバムは普通に聴けるし、良いアルバムだと思うけど、10代の俺には当時「なにこの緩いポップ・ミュージックは」という嫌悪感しかなかった。こんなの聴いてるならデフ・レパード聴いているほうが断然カッコいいとか、そんな感じですよ。

やっぱり個人的な感情が中心となってしまったが、そんな俺がクイーンを見直すのは80年代も終わる1989年に出た『ザ・ミラクル』まで待たないとならなかったわけです。