The Velvet Underground / Loaded: Re-Loaded 45th Anniversary Edition
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの4枚目のアルバム”Loaded”の45周年スーパー・デラックス・エディションを入手した。”Loaded”自体については以前書いたのでここでは割愛。スーパー・デラックス・エディションについて書いていく。
CD5枚+DVD1枚という構成で、各ディスクは以下の通り
Disc1 Loaded Remastered
Disc2 Loaded (Promotional Mono Version) Remastered
Disc3 Loaded Demos, Early Versions and Alternate Mixes
Disc4 Live At Max’s Kansas City Remastered
Disc5 Live At Second Fret, Philadelphia, 1970 (Previously Unreleased)
Disc6 Loaded Surround Sound Remix, Stereo Downmix And Original Stereo Mix
Disc1: Loaded Remastered
ディスク1は当然ではあるが、アルバム”Loaded”が2015年リマスターとして収録されている。過去には”Fully Loaded Version”のCDしか聴いていないが、それと比べると音がよりクリアになっているという印象。そして”Sweet Jane”と”Rock & Roll”はFull Length バージョンだ。他には当時のセッションのアウトテイクとして4曲が収録されていて、モーリン・タッカーが歌う”I’m Sticking With You”はアレンジが加わったような気がするが気のせいかな?”Fully Loaded Version”と聴き比べてみればいいんだけど、まだ比べてはいない。この曲と他の3曲(”Ocean”、”I Love You”、”Ride Into The Sun”)をディスク1に入れたのはボーナス・トラック的でもあり、ここまで含めて”Loaded”というアルバムおよび、その当時のVUの全貌が見えるような気がする。
Disc2: Loaded (Promotional Mono Version) Remastered
ディスク2は楽しみにしていた1枚で、当時全米のラジオ局に配られたプロモーション用のモノラル盤。1970年当時のラジオはステレオで聴くなんて文化ではなくモノラルだったから、当初からモノラル・ミックスを作って配ったのだろう。一般には市販されていなくて、しかもソースは忘れたけど、このプロモーション用モノラル盤は今では希少価値だそうだ。果たしてこのディスクだってオリジナルマスターからなのかどうかって話をすでにどこかで見たな。でもそんなことはどうでも良くて、モノラル・ミックスがこうして聴けるのが非常に嬉しい。モノラルになったことで、例えばルー・リードのヴォーカルの荒々しさが目立ったり、リズムが強調されていたりと、いかにもな感じなところが良い。そして俺はついに”Sweet Jane”と”Rock & Roll”、そして”New Age”の短縮バージョンを聴くことができた、しかもモノラルでとか。”Sweet Jane”は転調して”heavenly wine and roses”と歌うところの手前でフェイド・アウトしてしまい、これは曲の印象がまったく変わってしまうなと思った。
Disc3: Loaded Demos, Early Versions and Alternate Mixes
ディスク3はその名の通り、デモや初期テイク、別ミックスを収録していて、これは”Fully Loaded Version”と重複している。だけど曲順によって全体の印象も変わるから面白いなと思った。この時点で、後のルー・リードのソロ・アルバムに入る曲も多く録音されていたわけですね。これもリマスターされているので、音がクリアな感じがする。
Disc4: Live At Max’s Kansas City Remastered
“Loaded”がリリースされる数か月前、ニューヨークのマクシズ・カンサス・シティでのライヴ録音は、単品でもリリースされていて、2004年には2枚組となってリリースされていた。今回はその2枚組から2曲をカットした15曲が収められている。以前聴いたときはブートレグ並みの音源に、観客の話し声も目立って聴きづらいと思っていたけど、リマスターされて聴きやすくなったものの、やはり観客の話し声はうるさい。カットされた2曲のために2枚組のCDも買っておくべきだろうか・・・。ルー・リードはこのライヴの翌日に辞めているんだよね。
Disc5 Live At Second Fret, Philadelphia, 1970 (Previously Unreleased)
そしてある意味でこのボックスの目玉のひとつがこのライヴ盤であろう。1970年5月9日、フィラデルフィアで行われたライヴで、ルー・リード、ダグ・ユール、そしてスターリング・モリスンのトリオという珍しい編成でのパフォーマンスだ。モーリン・タッカーが産休で参加していないかららしい。しかし音が並以下のブートレグみたいで、本当にマニア向けのディスクだと思う(まあこのようなボックス自体がマニア向けだけどね)。通勤の電車で聴こうとすると演奏もヴォーカルもこもって聴こえるし、スピーカーでややボリュームを大きくしてやっとライヴの様子が分かるといった代物。実はまだ1度も通して聴いていないのだけどね。
Disc6 Loaded Surround Sound Remix, Stereo Downmix And Original Stereo Mix
ディスク6はDVDオーディオで以下の内容だ。
・5.1 Surround Sound Remix In DTS 96/24 and DOLBY Digital Surround Sound
・5.1 Surround Sound To Downmixes In 96/24 high Resolution Audio
・5.1 Flat Transfer Of Original Stereo Album In 96/24 High Resolution Audio
とりあえず、最初のDTSサラウンドによるアルバムを聴いてみたが、アルバムのイメージが大きく変わる内容だなと思った。”Who Loves The Sun”なんて、サビの部分でピアノが派手に鳴るし、もともとのステレオバージョンを聴いてみてもピアノははるか彼方の方にちょっと聴こえるぐらいだからね。他にも”Sweet Jane”のドラムのバタバタ感とか、”New Age”のソフト・ロックさなんてのはサラウンドになって強調された感がある。
ルー・リードが脱退した後のヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、ダグ・ユールを中心としてライヴ活動も続けられていくが、スターリング・モリソンもモーリン・タッカーも脱退し、ダグ・ユールがほぼひとりで作成した”Squeeze”というアルバムをリリースする(セッション・ドラマーに、ディープ・パープルのイアン・ペイス)。さすがにこのアルバムのデラックス・エディションは出ないと思う。そうするとやはりこの”Loaded”までがヴェルヴェット・アンダーグラウンドの正史なんだろうね。そんなある意味最後のアルバムである本作はもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。いつまでも「ルー・リードが勝手にミックスされたと怒っている」みたいな注目のしかたはしたくないね。良いアルバムだよ。