個人的にはなかなか嬉しいブツが出た。フランク・ザッパが70年代初期にザ・マザーズ名義で活動していた頃の8枚組のボックス・セット。1971年にリリースした “Fillmore East – June 1971”の50周年を記念したものらしい。
この時期のザッパは、ヴォーカルにフロー&エディ(マーク・ヴォルマンとハワード・ケイラン)を配し、随所にまるで寸劇のようなやりとりを含めたライヴ活動をしていて、ザッパの他の時期とは一味も二味も違った良さを醸し出していた。
俺はザッパの全活動の中でも、特にこの「タートル・マザーズ」が好きすぎて、オリジナルのリリース以外にもネット上でライヴ音源を見つけては聴いているが、オフィシャル・リリースとして8枚組なんて出るのだから手に入れないわけがない。
内容は、ディスク6の途中までは1971年6月5日と6日、フィルモア・イーストで行われた4ステージ分の曲が収録されている。つまりは”Fillmore East – June 1971”のコンプリートみたいなものだ。
“Fillmore East – June 1971”は11曲(A面B面に跨る”Willi The Pimp” を1曲として数える)が収録されていて、もちろん聴きごたえはあるし、ライヴ・アルバムとしても最高の1枚だと思うが、このボックスを聴くと”Fillmore East – June 1971”はダイジェストに過ぎないと思えてくる。それだけボックスに収録された曲数が膨大なわけだ。
とりわけ30分を超える “Billy The Mountain”や20分を超える”King Kong”を毎ステージ披露しているのだから圧倒されてしまう。前者については当時の時事ネタとかローカルな名称とか、そういうのを知らないと楽しめないと書かれていたのを見たことがあるが、雰囲気だけでも十分楽しめるし、後半のザッパのギターソロとかも含めた構成が素晴らしいと毎回思ってしまう。
そして4ステージ目にはアンコールで登場したジョン・レノンとヨーコ・オノのパフォーマンスがフルで収録されているのも嬉しい。これまでにジョンの”Sometimes in New York City” やザッパの”Playground Psychotics”にも収録されてきたが、決定版が出たって感じですね。ヨーコの存在感がやっぱり凄い。
残りのディスクでは、6月1日のペンシルベニア、6月3日のハリスバーグ、そして12月10日のレインボー・シアターでのライヴが収録されていて、特に貴重なのがレインボー・シアターで、ラストにビートルズの「抱きしめたい」をカバーしているのだが、この曲の直後にザッパはステージに上がってきたバカな客に突き落とされて大怪我をし、これがもとでタートル・マザーズが終了してしまったということになる。
とにかくボリュームがありすぎて、まだレインボー・シアターは聴けていないのだけど、同じ曲目でも日によって雰囲気が全然違うし、演奏も飽きない。もちろんフロー&エディのヴォーカルも同様に。他にもこの時期のライヴを収録したアルバムがここ10年で何種類か出ているが、どれも良すぎて俺にとっては至福の時間を味わえるアイテムなんだよね。