やはり買ったからには何か書いておかないとね。という訳で、ビートルズ『リボルバー』のスーパー・デラックス・エディションです。
改めて書くとこのスーパー・デラックス・エディションは、CD5枚がLPサイズのジャケットに収められていて、ハードカバーのブックレットとともにハードケースに入っているという代物。はっきりいって重い。ブックレットはそんなに豪華にしなくてもいいのに。
CDの内訳は以下の通り
Disc1 Revolver(New Stereo Mix)
Disc2 Session 1
Disc3 Session 2
Disc4 Revolver (Original Mono Master)
Disc5 EP
ディスク1はアルバムの2022年ミックスで、ディスク2, 3はアウトテイクやセッションを収録、ディスク4はアルバムのモノラル盤、そしてディスク5は『リボルバー』録音時にリリースした「ペイパーバック・ライター」と「レイン」の2022年ミックスとモノラルを収録したEP。期待していたよりはボリュームがないというか、セッションCDはもっと収録してもいいんじゃね?って感じですね。
では、気になったところだけピックアップ。
Disc1 Revolver(New Stereo Mix)
まずはアルバムの2022年ミックスから。まずこれは2009年リマスター盤と比較するといいのかもしれないが、そんなに厳密に比較はしていないので、一聴して気が付いたところだけ取り上げます。
2009年リマスターはアルバムリリース当時のステレオ盤と同じで、左右の泣き別れが目立つアルバムだった。簡単にいうと右のスピーカーからはギター、ドラムは左、ヴォーカルは右みたいな分け方。それが2022年ミックスは中央に寄せられていて、各楽器の音もバランスよく聴こえる。
曲では、「タックスマン」は冒頭の「ワントゥースリーフォー」ってカウントが小さめになっていているなと思った。次の「エリナー・リグビー」は2009年リマスターは最初の「Eleanor Rigby」の「Ele」までが左チャンネルに残っちゃっていたのが、2022年ミックスではなくなっていて、イヤホンで聴いていて気になっていた部分がようやく解消された気分だ。
そして「イエロー・サブマリン」、これは冒頭の「In The Town…」のところを注意深く聴いてほしい。2009年リマスターでは「In The Town…」の後からギターがジャンと鳴り始めるが、2022年ミックスでは最初から鳴っているのだ。これはモノラル盤がそうだったので、違和感はないのだけど、2022年ミックスで聴いた瞬間にギター入ってる!と気が付いた。
あと同曲でもう一つ、1分44秒からの「As we live a life of ease」以降、輪唱のような歌声(これはジョンらしい)が入るが、従来の2009年リマスターでは、そのあとの「Every one of us」から輪唱が入っていたのだけど、2022年ミックスはモノラルと同じ「life of ease」から入っているんだよね。
他の曲については一聴してすぐに気が付くような差はわからなかったので、こんな感じってことで。
Disc2/Disc3 Sessions
ディスク2と3は、レコーディングセッションやアウトテイクを集めたもので、どちらのディスクも40分ぐらいしか収録していないのが不満。しかも『アンソロジー2』に入っていた『リボルバー』関連の音源もここに入っているし。
セッションだけは曲目を挙げておきましょうか。まずはディスク2。
- Tomorrow Never Knows (Take 1)
- Tomorrow Never Knows (Mono Mix RM 11)
- Got To Get You Into My Life (First Version/ Take 5)
- Got To Get You Into My Life (2nd Version/ Unnumbered Mix)
- Got To Get You Into My Life (2nd Version)
- Love You To (Take 1)
- Love You To (Unnumbered Rehearsal)
- Love You To (Take 7)
- Paperback Writer (Takes 1 & 2/Backing Track)
- Rain (Take 5)
- Rain (Take 5/Slowed Down)
- Doctor Robert (Take 7)
- And Your Bird Can Sing (First Version/Take 2)
- And Your Bird Can Sing (First Version/ Take 2/ Giggling)
1は『アンソロジー2』にも入っていたテイクで、”Mark I”という仮タイトルだったもの。アルバムに収録されたものとはかなり違う不思議な感覚を覚えてるテイク。結構好き。2はこのボックスを俺に買わせることになったテイクで、『リボルバー』の英国モノラルの初版の一部にしか収録されていなかったもの。間奏の「ブワー」となるところでギターが聴こえないところが大きな違いだろうか。他もカモメみたいなエフェクトが異なるけど、普通に聴いていたら気が付かないだろう。
3も『アンソロジー2』に入っていたのと同じでちょっと前に会話が入っていたりして長めになっている。4と5は初めて聴くテイク。6、7、8はレコーディング時点では”Granny Smith”って仮タイトルの状態で、8の冒頭で「グラニースミス、テイクセブン」って聴こえますね。
9はバッキング・トラック、10はもともとこの速さで演奏したものを、テープの速度を落としたものが11だそうだ。12はアルバムに収録されているのは2分13秒だけど、この時点では3分あったのが分かる。13と14はアルバムのテイクにあるような激しいギターが入っていないもので、別の曲のように聴こえてくる。14は『アンソロジー2』にも入っていたものと同じかな。思い切り笑い声が入っているから。
続いてディスク3
- And Your Bird Can Sing (2nd Version/Take 5)
- Taxman (Take 11)
- I’m Only Sleeping (Rehearsal Fragment)
- I’m Only Sleeping (Take 2)
- I’m Only Sleeping (Take 5)
- I’m Only Sleeping (Mono Mix RM1)
- Eleanor Rigby (Speech Before Take 2)
- Eleanor Rigby (Take 2)
- For No One (Take 10/Backing Track)
- Yellow Submarine (Songwriting Work Tape/ Part 1)
- Yellow Submarine (Songwriting Work Tape/ Part 1)
- Yellow Submarine (Take 4 Before Sound Effects)
- Yellow Submarine (Highlighted Sound Effects)
- I Want To Tell You (Speech & Take 4)
- Here, There And Everywhere (Take 6)
- She Said She Said (John’s Demo)
- She Said She Said (Take 1/Backing Track)
1については割愛。どうせならディスク1に入れればいいのに。2は『アンソロジー2』にも収録されていたやつで、アルバム・バージョンには無い”Anybody got a bit of money”と早口で歌うコーラスが入っているのが特徴。
3から6は「アイム・オンリー・スリーピング」が続く。アルバム・バージョンに慣れていると4とか5のアコースティックな響きはまるで別の曲のように聴こえてくる。ここからどう発想することで逆回転のギターの音とか入れたんだろう。6には逆回転ギターの音が入っているが、アルバム・バージョン(ステレオ、モノ)、さらには米国盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』のものとも違うので、これは聴けてラッキーと思った。
7、8はどちらも歌が入ってない、ストリングスがメインのテイク。まるでクラシック音楽を聴いている気分になるね。9もバッキング・トラックのみだが、この「テイク10」は最も出来が良かったテイクだったとか。
10から13は「イエロー・サブマリン」。10と11はレコーディング以前の曲作り段階のテープなのか、アコースティック・ギターをバックにジョンがヴォーカルをとっている。12は海の中にいるような効果音が入ってない段階のテイク。そして13ではアルバム・バージョンよりも効果音がふんだんに入っているテイクで、特に冒頭の行進する足音とともにリンゴがラップのような語りをしている部分は、「レコーディング・セッション」によると計画と録音に結構な時間をかけたにも関わらず最終的にカットされた部分だそうだ。
14は曲よりも冒頭の会話が興味深い。これも「レコーディング・セッション」によると、ジョージ・マーティンに「タイトルは?」と聞かれたジョージが「分からない」と答えた後にジョンが「”Granny Smith Part Friggin Two”だ」と言っていて、そのあとにジェフ・エマリックが”Laxton’s Superb”というタイトルを思いつく。そんなやり取りが入っている。ちなみに”Granny Smith”も”Laxton’s Superb”もイギリス産の林檎の品種だそうだ。
15はなぜこのテイクが選ばれているのだろうと不思議に思ったが、日本盤のブックレット訳を読むと、完奏したのがこれともう1テイクだけだったらしい。16はジョンのデモで、17はバッキング・トラック。
以上がCD2枚にわたって収録されたセッション音源。ほかの曲は?と聴きたくなるが、収録しないということは、そんなに聴きどころがないって理解でいいのかね。確かに「グッド・デイ・サンシャイン」のアウトテイクなんてあまり面白そうじゃないしね。
Disc4:Revolver (Original Mono Master)
要はアルバムのモノラル盤ってことなんだけど、特に「アイム・オンリー・スリーピング」と「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」はDisc1と聴き比べてほしいですね。エフェクトの入り方とか入っている箇所とかが微妙に違うので。
あと「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」のフェイドアウト直前のポールのアドリブ・ヴォーカルが異なるのでそちらもよく聴いてみてください。
ところで、オリジナル・モノ・マスターってのは2009年のモノ・ボックスの盤とはまた聴いた感じが変わるのかな。どちらも持っているけどあまり感じなかった。
Disc5:EP
これはアルバムには収録されていない「ペイパーバック・ライター」と「レイン」の2022ミックスとオリジナル・モノ・マスターが収録されている。特にここで言うことはない。
購入してしまえば聴きまくるし、それなりに聴き比べてしまったりして、そうするたびに面白いよなぁと思ってしまう。なぜステレオとモノラル、各国盤で異なるテイクが入っていたりするのか、別に本人たちはわざとやっているわけではなく、まだモノラルが主流だった時代にステレオ・バージョンを作る際に、それに適した別のテイクを使ったからとか、どうせならステレオ用にこういうエフェクト効果にしてみようと、「より良く」しようとしていただけだと思うんだよね。
次はぜひとも『プリーズ・プリーズ・ミー』のボックスを頼む!アルバムの曲を1日で全部録音したセッションの音源をCD3枚ぐらいにして収録してほしい。でもきっと『ラバー・ソウル』あたりなんだろうな、それはそれで興味深いけど。