ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー


The Beatles / Magical Mystery Tour

俺の好きなビートルズの曲は「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」で、これは初めて聴いた14歳の時からずっと変わらない。もう30年近く。今さらこんなことを言うのもなんだけど、ビートルズがあれだけの成功と名曲を数多く生み出せたのはメンバーの才能もさることながら、彼らをプロデュースしたジョージ・マーティンがいたからこそと思う。彼の功績が最もいい形で出ているのが「ストロベリー・フィールズ」だと俺は考えている。この曲を作ったジョンと、形にしたジョージは共にキ○ガイなんじゃないかとも。

今ではあまりにも有名な話ではあるけど「ストロベリー・フィールズ」はキーもテンポも異なる2つのバージョンを繋いで作られた。1つはメロトロンを使ったスローなもので、もう1つはホーンセクションなどが入った賑やかなもの。(これって今では『アンソロジー2』で聴けるんだっけ?今持ってないからわからんわ。)ジョンがその両方のバージョンを気に入ってしまいジョージに「つなげてくれない?」と頼んだ。しかしジョージは「キーもテンポも違うからムリ」と答えた。するとジョンは「キミならできる」と強引にも押し付けたそうだ。

困ったのはジョージ。きっと心では「ったくよぉ、ムリだって言ってるだろ」なんて思ったかもしれないけど、そこはぐっと堪えてジョンの要求を満たすべく2つのバージョンを聴き比べた。するとこの2つのバージョンは半音の差があって、静かなバージョンのテンポをちょっと上げて、ホーンの入ったほうのテンポをちょっと下げてあげれば同じキーになるってことに気がついたそうだ。

しかししかし、録音したテープのテンポを変えるという行為、2011年の今だったら俺たちだってクリックひとつでテンポやキーを変える事なんてできるが、まだレコーディングだってほとんどせーので演奏していたであろう1966年にそんな機材なんてありゃしない。そこでジョージとエンジニアのジェフ・エマリックは考えに考えて、テープを回す機材に送る電流の量を調整することによってテープの速度を変えたというから驚いてしまう。「テープは正しい速度で再生される」ってごく普通の常識をかえたってことだからね。テンポが違うなら同じテンポで演奏しなおそうってことをしなかったんだよ!?キ○ガイとしか言いようがない。

大体ジョンもジョンだよな。最初はアコースティック・ギターとメロトロンを使ったとても美しい曲だったのに、録音を重ねるごとにホーンが派手になりドラムが重くなり、最初のバージョンとはどんどんかけ離れていく。ラリっていたとしか思えない曲の変貌ぶり。もちろん正規でリリースされている「ストロベリー・フィールズ」ではそんなのは分からないけど、今じゃYouTubeで聴けちゃうんだよね。

Strawberry Fields Forever [Take 1-4]
Strawberry Fields Forever [Remake] Take25 and 26

この時期を境にビートルズのレコーディングは一層複雑なものとなり、そんな彼らの要求に応えるかのようにレコーディング技術も発展しているように見える。先のテンポを変えるなんてのもこの曲が無かったらそんな発想はまだ生まれてなかっただろうしね。特にジョンは要求のしかたが抽象的過ぎて、例えば「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」なんて「ダライ・ラマが山のてっぺんから歌っているようなサウンドにしてほしい」とか、なんだそりゃって感じ。それを具現化したジョージ・マーティンとスタッフの功績はあまりにも偉大すぎる。

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