イエス『危機』50周年記念ジャパンツアー – 2022/09/12 オーチャードホール

イエス『危機』50周年ジャパンツアー

イエスの来日公演に行ってきた。今回はアルバム『危機』のリリースから50周年という節目であり、アルバム全曲を披露するということで、これはぜひ観たいと思ったわけだ。

前回イエスを観たのは1992年の8人イエスの頃で、それ以降もイエスは何度も来日しているが、俺がプログレに飽きてきたりとか、そうじゃない時でも興味や観たいと思うタイミングが合わなくて、そんなことをしていたら30年も経っていた。

今回は『危機』全曲披露もきっかけではあるが、何よりもアラン・ホワイトが亡くなってしまったことで、イエスを維持している古株メンバーがスティーヴ・ハウだけになってしまい、いま観ておかないと絶対に後悔すると思ったのだ。なお、ジェフ・ダウンズは俺にとってはイエスの古株メンバーではない。

 

ライヴはほぼ定刻に始まった。最初にアラン・ホワイトを偲び、彼の写真が映し出されながら「世紀の曲がり角」が流れる。こういうのを見ると、本当にいないんだなと思い知らされる。

そして「火の鳥」が流れ、メンバーが出てくる。俺はまずこの時点で涙腺がもろくなっていた。「火の鳥」を会場で聴くのも30年ぶり。30年という年月が長かったようで短い。1曲目は「自由への翼(”On The Silent Wings of Freedom”)」。ライヴで聴くのは初めてだし、ジョン・デイヴィソンのヴォーカルも悪くない。

2曲目「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」、アラン・ホワイトに代わって参加しているジェイ・シェレンのドラムも違和感なくパワフル。スティーヴ・ハウのギターは変わらず素晴らしい。「夢の出来事(”Does It Really Happen?”)」でのビリー・シャーウッドのベースはそのまんまクリス・スクワイアのそれじゃないか。スクワイアがよく身にまとっていたマントみたいな服装まで真似てるようだし。ジェフ・ダウンズのキーボードはアルバム『ドラマ』そのもの。初めてライヴで聴けたのが感激だった。そのあとは「不思議なお話を(”Wonderous Stories”)」を挟んで、最新作『ザ・クエスト』から「ジ・アイス・ブリッジ(”The Ice Bridge”)」と続く。

ほかのメンバーが袖に下がり、スティーヴ・ハウのソロ・コーナーでは”To Be Over”のインストゥルメンタルと、『海洋地形学』の「古代文明」の終盤のアコースティックパートである”Leaves of Green”を披露。後者ではヴォーカル部分でジョン・デイヴィソンが出てきた。次にジェフ・ダウンズのソロ・コーナーとなり「ラジオ・スターの悲劇」をキーボードで弾きまくる。

そしていよいよ始まった「危機」。イントロが始まり、ヴォーカルパートが始まったところで俺は再び感涙。イエス名義でついに「危機」を聴くことができたからだ。30年前の8人イエスではやらなかったし、ABWHで聴いてはいるけど、やはりイエスの名の下でやるのとは違う。第4楽章である”Seasons of Man”に入った時には「もう危機が終わってしまう」と悲しくなってしまった。もっと聴いていたいと思った。「同志」はもはや定番。「シベリアン・カートゥル(”Siberian Khatru”)」はイエスの楽曲の中でも最も好きな1曲だが、生で聴くのは初めて。たった3曲で1枚のアルバムを成す『危機』ではあるが、3曲があっという間に思えた。3曲終わったあとの盛り上がり方がすごかった。これでいったんメンバーはステージをあとにした。

ラストは「ラウンドアバウト(”Roundabout”)」と「スターシップ・トゥルーパー(”Starship Trooper”)」で大盛り上がりで終了。

 

結論としては「観ておいて良かった」としか言いようがない。イエスとしてはメンバーも昔と違うが、間違いなくイエス・ミュージックの夜だった。新たなメンバーはちゃんとイエスの精神を受け継いでいるようだし、今後たとえハウやダウンズがいなくなったとしても、イエスというバンドは続いていくのではないかと思う。いや、続いてほしいものだ。

イエス

また紙ジャケが再発されるみたい。

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