音楽を聴いて驚きを得るということ

俺にとって音楽を聴くことの最大の魅力は「驚き」を得られること。
こんな音楽があるんだ、こんな凄いアルバムがあるんだ、
録音の背景にはこんなことがあったんだ・・・など、こちらが思いもしなかった
事実を知ったり、音を聴けたりしたことに快感を覚えてきた。
ただ単に「○○を聴いて良かったから感動した」なんてレベルのものではなく。

今までに何度かそういう体験をしたけど、
そんな驚きを最も多く与えてくれたのは、やはりビートルズだと思う。

21歳の頃に「ビートルズ・レコーディング・セッション」が刊行され、
その本でレコーディングの裏話的なものをたくさん知り、
さらに追い討ちをかけるように出たのが写真のブートレグ”Ultra Rare Trax”のシリーズだった。
あれを機にビートルズへの研究心のようなものが芽生えたようなもの。
それから20年以上経った今でも、ビートルズの様々な音源を聴いて思うことは多々ある。

先日、ある人に『サージェント・ペパーズ』に入っている
“A Day In The Life”についてこんなことを教えた。
「最後のピアノのジャジャーンって音の最後のほうに、椅子のきしむ音が聞こえる」と。
4分50秒あたりのところ、ピアノの残響音だからボリュームをかなり大きくすることで
ようやく聴こえるこの音、俺はCDで初めてそれを聴いたときに「おおっ」と思ったのだけど、
それを人に話しても大抵は「ふーん」で終わってしまう。
まあ、そうだろうな、何か音が入っていても不思議じゃないし、
聴こえたから何?ってのもあるだろう。

しかしそれを聴いた彼/彼女は純粋に驚いてくれた。
そんな音が自然に入ってしまっている生々さに感銘を受け、
自分が生まれていない時代の、教科書に載ってしまうような人たちが
アナログな録音をしていたこと、そして本当に存在していたんだと。
それを聞いて俺は、かつて自分が感じた、まるでレコーディング現場にいるかのような
感覚を覚えたことを思い出した。

きっとこれを今読んでいる人の多くにしたら他愛の無いことに思えるかもしれない。
だけど、単純に曲が良かったとかではなく、かすかに聞こえる音を聴いたことで
イマジネーションが広がるなんてとても素敵なことだと思う。
これこそ俺が言う「驚き」と同じものだ。

そんな言葉を聞けて俺はとても嬉しかったし、
まだまだこんなもんじゃないんだよってのも教えてあげたくなった。
(大きなお世話だよなw)

ビートルズに限らず、音楽を聴いて驚きを得られるって、本当に素晴らしいことだと思う。
あくまでも俺の聴き方だけどね。