キング・クリムゾンにはまったきっかけは『暗黒の世界』


King Crimson / Starless and Bible Black

キング・クリムゾンの6枚目のアルバム”Starless and Bible Black”。クリムゾンといえば『クリムゾン・キングの宮殿』とか『レッド』とか、『太陽と戦慄』といったアルバムのほうが先に出てくるだろう。

“Starless and Bible Black”は邦題が『暗黒の世界』といって、『太陽』と『レッド』の間の作品、1973年のリリース。今はこの時期のクリムゾンを何て呼んだらいいのだろうか?90年代に復活するまでは確か「後期クリムゾン」と言ってたけど。その後期クリムゾン、ロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブラッフォード、デヴィッド・クロスの4人による編成は今でも人気があるはず。

当初、後期クリムゾンは上の4人にジェイミー・ミューアを加えた5人でスタート、しかしすぐにミューアは脱退して4人となり、ライヴ活動を重ねていく。そんなライヴのマテリアルを中心に作成されたのが『暗黒の世界』で、スタジオで録音したのは”The Great Deceiver”, “Lament”の2曲と、”The Night Watch”のイントロ以外で、あとはほぼ1973年11月23日の
アムステルダム公演がもととなっている。

このアルバムに入っている曲で知っていたのは”The Night Watch”だけだった。「夜を支配する人々」という邦題がついていて、高校生の時にプログレ特集をFMで録音したテープで聴いていたのだけど、正直それほど好きではなかった。なので最初はこのアルバムを聴いてとっつきにくく感じた。だってヴォーカル曲は8曲の中で3曲しかないし、インスト曲は中途半端に聴こえたし。

だけど、最後の2曲、アルバムタイトル曲と”Fracture”という長尺な2曲が俺にその印象をガラっと変えさせた。どちらもインスト曲だが、その張り詰めた緊迫感と、一気に解放されるエネルギーの対比が当時の俺にはこのうえなく快感だった。特に”Fracture”は、この曲がきっかけでクリムゾンにはまったと言ってもいい。これはいま聴いてもまったく印象が変わらない。

俺はこのアルバムを19歳のときに、当時の学校の先生だった外人教師に薦められた。当時、宿題として英語で日記を書くというのがあって、その中で俺が『宮殿』か『太陽』のことを書いたのだと思う、好きとかそんなようなことを。そのときに彼は “Starless and Bilbe Black is the best! you should have it!” みたいなコメントを記入してくれた。でも当時の俺はNYパンクあたりのレコードばかりを買っていたのですぐには聴かなかった。

数年後、確か22歳ぐらいの時。その頃からクリムゾンを聴くようになり、最初は『宮殿』と『太陽』を買ったが、その次に買うアルバムとして『暗黒の世界』を選んだ。かつての先生に薦められたことを思い出したからだ。もし当時このことを思い出さなかったら別のアルバムを聴いて、それほど熱心に聴かずに終わっていた可能性もあっただろうなと思う。そう思うと、あのときの先生には感謝しなくちゃならないね。

Thanks, Mr. Trevor Clements

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