ウォルター・ベッカーのこと

Walter Becker albums

日頃「スティーリー・ダン」とか「ドナルド・フェイゲン」という名前は頻繁に見かけるが、今日ほど「ウォルター・ベッカー」の名前を見た日はない。亡くなったからだ。普段は誰かが亡くなるとここぞとばかりに「好きだった」人たちがわいてくることが嫌いで仕方がないのだが、今日だけは良いと思った。もっとみんなウォルター・ベッカーのことを知ってくれと思った。どうせ明日になったらみんな他の話題に飛びつくんだろうから。

日曜日の午前中、俺はたまたまベッカーの “Circus Money”(写真左)をデカい音で聴いていた。いや、その2日前も通勤中に聴いていた。別にそれが何かの予感だったとか、そんなことを言うつもりはない。だって頻繁に聴いているアルバムだし。俺の生活の中の一部としてこのアルバムは存在しているんだから。

いつかベッカーもソロ・ツアーとかして日本にも来てくれないかななんて思っていたが、それは正直厳しいだろうと悟ったのは実は最近のことで、近年のベッカーの姿を写真でみてちょっとヤバいと思っていたからだ。やけに太ってしまっていて、病気になっちまうだろうなんて思っていたのと、1か月ぐらい前にフェイゲンがベッカーの体調についてコメントしているなんて記事を見かけたからなおさらだった。

記事が出た最初はデマ説もあったからデマであってくれと思っていたけど、フェイゲンがコメントを出したことで本当のことだったんだと受け入れるしかなかったよね。

スティーリー・ダンの結成メンバーであるウォルター・ベッカーが亡くなった。享年67歳だった。...

このフェイゲンのコメントは随所でぐっとくるものがある。最初にベッカーを「友人」であり作曲の「パートナー」と言っている。SDの楽曲とフェイゲンのソロ・アルバムと比べるとSDの方がどこかねっちょりしているように聴こえないだろうか?(ねっちょりという表現が相応しいとは思わないけど、そんな感じ)

フェイゲンのソロ曲はきっちりコンパクトに終わるのに、SDはなかなかそうはいかないところが多く、これがベッカーの要素なんじゃないかと長年思ってきた。そしてベッカーがドラッグでボロボロになってフェイゲンとのコンビを解消したあと、フェイゲンは “The Nightfly” をリリースするもその後は創造力が枯渇して90年代にベッカーと再び合流するまでスランプのようになっていたことを考えると、ベッカーはフェイゲンにとっては唯一無二のパートナーだったのは想像に難くないでしょう。

そんな相方がいなくなってしまい、スティーリー・ダンも消滅してしまうんじゃないかと思ったけど、フェイゲンのコメントの最後は泣けるぞおい。

僕は、僕らで一緒に作った音楽をスティーリー・ダン・バンドと共にできるだけ長く、生き永らえさせていくつもりだよ。

ドナルド・フェイゲン

なるほど、友人であるベッカーのためにもフェイゲンはSDの名を使い続けるのか、そう理解したよ俺は。そりゃそうだ、SDを風化させちゃダメだよな。

写真のCDについてもコメントしておこうか。

右は1994年の1枚目のソロアルバム”11 Tracks Of Whack”。フェイゲンの “Kamakiriad” とSDの再結成ツアーを経てリリースされたアルバムで、フェイゲンがプロデュースを行っている。ベッカーのヴォーカルを初めてこれで聴いたわけだが、俺は当初から好きだったんだけど、インターネット黎明期に数あったSDのファンサイト(俺もそのうちのひとつを作っていた)ではあまり評判が良くなかったな。

左の “Circus Money” は2008年にリリースされた2枚目のソロ・アルバムで、バックをSDバンドの面々が参加しているので音の感じがSDの “Everything Must Go” に近いものがある。違いといえば全編「レゲエ」だということ。アナログな響きと完璧な演奏とベッカーのヴォーカルがとても癖になる。


Walter Becker / 11 Tracks Of Whack(MP3)


Walter Becker / Circus Money (MP3)

俺はこれからもこの2枚やSDのアルバムを聴き続けるよ。