最近のCDの「アナログ化」に思う

キリンジの紙ジャケ

KIRINJI – <キリンジ>リリース情報( 9/21アナログ盤(LP)発売 / ワーナー時代5作品)

キリンジの初期5作品がアナログでリリースされるそうだ。去年だったか紙ジャケでリリースされて、写真はその紙ジャケである。上記の情報を見て、俺は複雑な気分になった。遡ること何か月か前、オリジナル・ラブの初期4作品もアナログでリリースされることになって、俺もAmazonに予約をしたのだけど、実は『LOVE! LOVE! & LOVE!』と『風の歌を聴け』を昨日キャンセルした。なぜなら最近の、アルバムの「アナログ化」に少々疑問を持つようになったからだ。

キリンジもオリジナル・ラブも、初期作品は最初からCDでのリリースだった。90年代半ば近くからアナログは衰退していったから当然のことで、かつてのアルバムの「CD化」とは逆の「アナログ化」ということだ。それはいい、別にいいし、アリだと思う。だが、どちらも各アルバムが「2枚組」というのが俺にはいただけないのだ。

まずキリンジ。1stの『ペイパー ドライヴァーズ ミュージック』だが、2枚のアナログの収録曲はこうだ。ナチュラルファウンデーションのページから抜粋させていただく。
<DISC 1>
Side 1 1. 双子座グラフィティ 2. 風を撃て 3. 野良の虹 4. 太陽の午後
Side 2 1. 雨を見くびるな 2. 甘やかな身体 3. P.D.M. 4. ニュータウン
<DISC 2>
Side 3 1. 汗染みは淡いブルース 2. 冬のオルカ 3. 五月病 4. かどわかされて
Side 4 1. さよならデイジーチェイン* 2. 双子座グラフィティ ‐INSTRUMENTAL-* 3. 雨を見くびるな ‐INSTRUMENTAL-*

このアルバム、本来ならSide3の4曲目「かどわかされて」で終わりなのに、Side4に紙ジャケCD化の際に収録されたボーナス・トラックまで含まれている。なぜそこまでを1stアルバム扱いにしちゃうのやら・・・。以降のアルバム『47’45″』も『3』も『Fine』も同様にボーナス・トラックまでを2枚のLPに収録しているのだ。「アルバム」としてのコンセプトとか、そういうのは抜きなのだろうか?

次にオリジナル・ラブ。俺がキャンセルすることにした『風の歌を聴け』の収録曲を見てみるとこうだ。こちらはユニバーサル・ミュージックのサイトを参照した。
Disc1
Side A
01.The Rover
02.It’s a Wonderful World
03.The Best Day of My Life
Side B
04.二つの手のように / Futatsu No Te No Youni
05.フィエスタ / Fiesta
Disc2
Side A
01.心(Album Mix) / Angel Heart
02.時差を駆ける想い / Jisa Wo Kakeru Omoi
03.Two Vibrations
Side B
04.Sleepin’ Beauty
05.朝日のあたる道(Album Mix) / As Time Goes By

なんだろう、この3曲2曲3曲2曲って分け方。このアルバムはトータルで56分ぐらいあって、アナログ1枚で収録しようとすると最初の5曲で29分あってキツいのはわかる(アナログレコードは片面23分ぐらいがちょうどよい)。わかるけど、その分け方でいいの?と思ってしまう。今までCDで聴いてきて、「The Best Day of My Life」と「二つの手のように」の間でブレイクが入る訳ですよ(裏返すから)。なんか違和感あってね。俺はこのアルバム、仮想A面B面を想像しながら今まで聴いてきて、「フィエスタ」までがA面というイメージを持っているからなおさらなんだろうけど。

1stの『LOVE! LOVE! & LOVE!』はCDの時点で2枚組だからアナログ2枚組ってのは分かるんだけど、それでも納得いかないのはCD2枚目の1曲目の「Love Vista」は12分もある曲なんだから、アナログ的には同曲とあと2曲で、残りの4曲をB面にすべきなのに、ここでも律儀に4曲3曲という分け方にしてあるが、これは本当にそうしているのだろうか?DISC2はA面が25分のB面が15分ってことになるけど・・・。(参考:ユニバーサルミュージックのサイト

結局俺は何が言いたいのかというと、キリンジもオリジナル・ラブも「アルバム」の構成や(もしあるなら)コンセプトを台無しにしているんじゃないかってこと。アナログなので、曲数を詰め込まないほうが良い音になるのは分かるけど、どちらも安易に思えてしまうのです。商売のためにやっているような、そんな感じ。アナログにすりゃファンやマニアが諸手を挙げて喜ぶと思ったら大間違いだよ。キリンジもオリジナル・ラブもどのアルバムも好きなだけに、商品のために無理やり分けられたアナログ盤を愛すことは俺にはできないと思う。

CD時代になって、曲が多く収録できるようになったこともあるけど、1曲の尺も長くできるようになった。それは悪いことじゃないし、長時間収録が可能なメディアになってそれは必然的なものだったと思う。最初からCDでリリースされたものをアナログ化することって実は難しいんじゃないかと、この両者の収録内容を見て感じた。その点、ピチカート・ファイヴの『カップルズ』と『ベリッシマ』はもとはLPでリリースされたものだから「良い音」のために2枚組にするようなことはないだろうし、何よりも小西康陽がレコードのA面B面の切れ目を変えるなんてことは無いだろうね。

さて、まだ予約したままの『結晶』をどうしようかな、ジャケットのためだけに押さえているんだけど。

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