キング・クリムゾン “Live In Toronto”

King Crimson / Live In Toronto
King Crimson / Live In Toronto

キング・クリムゾンが始動というニュースは2014年ごろ見た。そしてドラマーが3人もいる7人編成という情報を去年見た。そして北米ツアーの後、日本公演という情報を見て、2000年の”ConstracKtion of Light”以降クリムゾンから離れていた俺はちょっと興味を持った。今度のメンバーではライヴはやるが、新しい曲は作らない、つまりこれまでの曲をひたすらやるバンドだということらしい。来日公演に行こうかどうしようか迷っているうちに終わってしまい、今回2015年11月にカナダのトロントで行われたライヴ盤がリリースされるというので、ちょっと出遅れたけど購入した。

そう、俺は2000年以降はクリムゾンへの興味を失くしていて、その間に「ヌーヴォ・メタル」だの「キング・クリムゾン・プロジェクト」なんて言葉をネット上で見かけていたけど、何がなんだか分からなくなっていた。たまに聴くのも”USA”と”Discipline”という程度だった。そして今回の編成にはエイドリアン・ブリューがいないので、最初はどうでもいいと思っていて、メンバーはロバート・フリップ(ギター)、トニー・レヴィン(ベース)、パット・マステロット(ドラム)の90年代から固定の3名に加え、ギャビン・ハリソン(ドラム)、ビル・リーフリン(ドラム)、ジャッコ・ジャクジグ(ヴォーカル、ギター)、そしていちばん驚いたのは70年代、アルバム”Islands”に参加していたメル・コリンズ(サックス、フルート)がいることだ。そして興味をそそられたのはセットリストに、その”Islands”からの”The Letters”や”Sailor’s Tale”が入っていたり、90年以降の曲も含まれていて、これまでのキャリアを総括するような内容で、それらをトリプル・ドラムの編成でどのように再現していくのかを聴いてみたくなったのだ。

King Crimson / Live In Toronto
Disc1
01. Threshold Soundscape
02. Larks’ Tongues In Aspic Part One
03. Pictures Of a City
04. VROOOM
05. Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind)
06. Meltdown
07. The Hell Hounds O Krim
08. The ConstruKction Of Light
09. Red
10. Epitaph
Disc2
01. Banshee Legs Bell Hassle
02. Easy Money
03. Level Five
04. The Letters
05. Sailor’s Tale
06. Starless
07. The Court Of The Crimson King
08. 21st Century Schizoid Man

このライヴ盤を聴いて思ったのは、俺は去年の来日公演に行かなかったことについて「もったいないことをしたかもしれない」ということだった。期待以上に激しくて、これまでのどのクリムゾン(2000年以降は聴いてないので比較しません)よりもすごいバンドになっていると思った。現代のテクノロジーをもって「クリムゾン・キングの宮殿」や「エピタフ」といった最初期の楽曲がオリジナル・バージョンと同じように鳴り響いているところに俺は大きな感動を持った。メロトロンの音色をキーボードでちゃんと再現しているものだから、特に「クリムゾン・キングの宮殿」のイントロを最初に聴いた時は「おおっ!」と声に出して喜んでしまった。さらにはメル・コリンズによるサックスがより一層の効果をだしている。まるで初期のクリムゾンが現代に甦ったかのよう。ヴォーカルを務めるのはジャッコ・ジャクジグだが、なんとなくグレッグ・レイクに共通したものがあるように思い、それが初期の楽曲をより引き立てている。ちょっと「イージー・マネー」や「スターレス」だと違和感あるけど、それを差し引いても素晴らしい。ドラムも厚く、メインのリズムとパーカッシブな部分をきっと3人で分担しているのだろう。

アルバムの聴きどころはやっぱりディスク2の5曲目以降じゃないだろうか。ここは嫌でも盛り上がるし、「21世紀の精神異常者」をついにリアルタムのクリムゾンで聴くことができた。80年代、90年代のクリムゾンは「21世紀の精神異常者」をライヴではやらなかった。それはバンドの性格上では正解で、むしろやらなくていいと思っていたが、やはり心のどこかでは現在のバージョンを聴いていみたいと思っていたのだろう。何度も繰り返して聴いてしまう。

キング・クリムゾンをこんなに聴いているのは20代の頃以来とも言えるぐらい、このアルバムは何度も聴いているし、過去のライヴ・アルバムなども久々に聴いたりしている。そして、離れるきっかけとなってしまった”ConstracKtion of Light”をもういちど聴きなおしたいとも思っている。そのぐらいこの”Live In Toronto”は気にいった。

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