イギー・ポップの新譜 “Post Pop Depression”

Iggy Pop / Post Pop Depression
Iggy Pop / Post Pop Depression

イギー・ポップの久々のソロ名義によるアルバムが出た。イギーは「これが最後のアルバムになるかもしれない」というようなことをほのめかしていて、その言葉の意味するところについては悪い方向には考えたくはないが、かなり力の入った作品になっている。アルバムはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムとディーン・フェルティタ、そしてアークスティック・モンキーズのマット・ヘルダースをバンドメンバーとして迎えて録音している。そんな前情報から俺は、アルバムはザ・ストゥージズばりのガレージな感じになるのだろうと予想していたが、これが良い意味で裏切られた。

アルバムを2度ほど聴いてから思ったのは、イギーがそのキャリアを総括しているようだということだった。それもソロ・アーチストとしてのキャリア。どことなく”Idiot”や”Lust For Life”の雰囲気を踏襲しているかのようで、実際にTwitterなどでこのアルバムのことを探すと同じような言及が散見される。だけど俺はそれと同時に、内省的な曲も入っていた”Avenue B”に通じるものがあると感じた。気負いのない安定した音とヴォーカル、そこからは先に挙げた初期作品の要素もあれば、ブルースやカントリーの雰囲気も感じ取ることができる。そのことはイギーのヴォーカリストとしての円熟ぶりを証明しているかのようだ。あと、デヴィッド・ボウイの”Blackstar”に雰囲気が似ているのは気のせいだろうか?自分がやりたい音楽を具現化するために最適な人たちを選んでレコーディングを行うというところに、さらなる前進をしていこうという気持ちを感じるのだ。

以前、ロッキング・オンかレコード・コレクターズか忘れたが、イギーはサービス精神が良すぎて、みんなが求める「イギー・ポップ像」に応えようとすると書いてあって、そう言われるとそうかもと思っていたことがある。今回のアルバムではいわゆる「サービス精神」は皆無で、ルー・リードもすでに亡く、デヴィッド・ボウイも逝ってしまい、何よりもザ・ストゥージズのオリジナル・メンバーもこの世にいなくなって、イギーの中で何かがそうしなかったんだろうなと思えてしまう。考え過ぎだと思うけど。

とにかくこの”Post Pop Depression”は近年のイギーのソロ・アルバムの中でも最高の1枚だろう。2016年だというのに、デヴィッド・ボウイもイギー・ポップも最高傑作と言ってもいいクオリティのアルバムを出しているなんてなんてことだよ。

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