遠藤ミチロウ『TERMINAL』にまつわる思い出

遠藤ミチロウ / TERMINAL
遠藤ミチロウ / TERMINAL

遠藤ミチロウの2枚目のソロ・アルバムとなる『TERMINAL』。当時、ビデオ・スターリンとパラノイア・スターという2つのバンドで再始動した頃で、このアルバムは後者のバンドで録音されたもの。ザ・スターリンの『FISH INN』に通じるドロドロしたザ・ドアーズのような雰囲気を感じさせるアルバムだった。全5曲、長尺の曲ばかりだ。

1.飢餓々々帰郷
初めて聴いた時は最初の暗い導入と、いきなり「白い幼虫」で始まる歌にしびれっぱなしだった。まだこの時の俺はこの曲が実はザ・スターリンの時に録音されていたなんてまったく知らず、この当時の新曲だと思っていた。約12分におよぶサイケデリック風でもプログレっぽくもある。これがパラノイア・スターか、と素直に感じたものだ。

2.Lucky Boy
シングルとしてリリースされた、唯一コンパクトな曲。これは『破産』の延長でもある気がした。イントロの音がでかくて、当時はあまり好きになれなかったのを覚えている。だって前曲と次曲が名曲過ぎてね。

3.溺愛
ピアノがとにかく美しい。ザ・スターリンからは想像もできない、こんな綺麗なラヴ・ソングまで作れるのかと当時は驚いた。そして数ヵ月後、これが実はザ・スターリンの『trash』に入っていると知ったときはさらに驚いた。このアレンジで発表して大正解だったと思う。

4.OH!マルクス
「先天性労働者」の歌詞と「お母さんいい加減あなたの顔は忘れてしまいました」のメロディを合体させた曲。後のスターリンのライヴでもやってたみたい。まだ当時の俺は元となってる2曲を知らなかったから、共産党宣言をそのまま読み上げる(叫ぶ)やり方がユニークに感じた。散々読み上げて「勝手に決めるな」って言うし。

5.誰かが寝ているような気がする
なんかほのぼのしたくなる感じがするけど、最後までそうはさせてくれないよね。散々誰かが寝ているような気がするとか言って、「起きろ」だし。キーボード主体の曲でかなりの名曲だと思ってる。

1987年、俺はまだ19歳で学生だった。授業の合間の昼休みにこのレコードを買って、その当時のクラスの奴に見せたら「ん?5曲しか入ってないのに2800円もするの?高えよ!よくこんなの買うな」とか言いやがった。「アルバムだからだよ」って言ってやったが、「でも高えよ、訳わからねえ」って、それはこっちの台詞だ。

どうせこいつはわからねえ、そう思って以降はミチロウの話はしなかった。(ちなみにこれと同一人物)これ以降、俺はザ・スターリンの廃盤となっているレコードを大枚はたいて買い集め(といっても散財したわけじゃない)、ビデオ・スターリンを見に新宿ロフトに行ったり、その数年後には『trash』を手に入れるに至ったってことだ。

久々に聴いてそんな事を思い出した。しょうもない若造だった頃の話。だけどこの頃に聴いた音楽がいちばん自分の中に根付いているよね。

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