「幻の名盤」となっていたサミュエル・パーディのアルバムが再発

なんとなく気になって調べてみたらビックリした。1999年にリリースされた、サミュエル・パーディのアルバム『夏のハイウェイ』(Musically Adrift)が再発されるじゃないか!

当時から愛聴してきたけど、今じゃ入手困難となっていた「幻の名盤」「裏名盤」が再び日の目を見るというのは嬉しいことだ。

この素晴らしい、快挙ともいえるリリースをしてくれるのは、横浜に拠点を置くグレイドックスレコーズ。このレーベルのWebサイトによると、ボーナストラック1曲が追加されるらしい。

なんて事をしてくれるんだ!この1曲のために買うべきかどうか悩む!しかもこのアルバム、当時から日本限定でリリースされたんだってさ。どうりで何年か前に調べたときに、海外のサイトでも日本盤ばかりが紹介されていたわけだ。

さて、これだけじゃ何のことか分からないという人もいると思うので、数年前に俺があるフリーペーパー用に書いたレビューを以下に掲載します。長文なので、覚悟して読んでください。

名盤とよばれるものには大きく分けて2種類ある。1つは名盤特集が組まれると必ずと言っていいほど名前が挙がる、それこそ大多数の人がそれと認めるもの。そしてもう1つは俗に言う「隠れた名盤」とか「幻の名盤」などと呼ばれるようなものである。このように呼ばれるアルバムは発売当時やそれ以降も特定のリスナーによって支持されてきて、有名ではないがそれなりに支持層があるような音楽やアルバムに多いような気がする。今回紹介するサミュエル・パーディのこのアルバムもどちらかと言うと将来「幻の名盤」となるに間違いない1枚だ。

突然だがスティーリー・ダンをご存知だろうか?彼ら(ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカー)はかつて70年代、同じスタジオを1年以上も毎日予約しておいたり、当時の優れたスタジオ・ミュージシャンを限りなく動員して自分たちの音楽を完璧なものにすべくレコーディングに励んでいた。それまでロックとはイコール、バンドという概念が強かった時代にあって、彼らはまるでそんなロックの幻想をうち破るかの如く音を1つひとつ作り上げていった。そして後に”AJA”や”GAUCHO”などの名盤を生みだしたのである。80年代になるとバンドというよりもユニット形式のグループが多く出てくるようになったのは、技術の進歩もあったかもしれないが、スティーリー・ダンの存在を抜きでは語れないと思う。

そんなスティーリー・ダンの影響を大きく受けたと思われるグループの1つがこのサミュエル・パーディ。かつてジャミロクワイのツアーにも参加していたという2人組がその実体なのだが、この「サミュエル・パーディー」という名前だけを見るとまるで個人名のようだが、まずそんなところがスティーリー・ダンにそっくりだし、音もどこかAORっぽいところまで似ていて、ヴォーカルなんてまるでドナルド・フェイゲンだ。さらにクレジットを注意深く見ると、ギタリストのエリオット・ランドールを始め、かつてのスティーリー・ダンのレコードに参加していたミュージシャンが数名散見される。そして極めつけはエンジニアとして起用されているエリオット・シャイナー。ここまでされて「スティーリー・ダンの影響は無い」なんて言われた日にはウソ付け!と誰もが思うだろう。まあ本人達はあっさりと影響を受けていると言っているらしいが…。

収録された10曲はどれも爽やかさを感じるAOR調の曲で占められていて、聴いていて飽きることはないのだが、このアルバムが堂々と「名盤」と言われることは無いと思う。そもそもスティーリー・ダンだって聴いているだけでマニアックと思われがちなのに、その影響下にあるグループのレコードが本家を上回るということはまず無いだろう。しかし熱心な聴き手は常にいるだろうし、そんな人たちによって今後「隠れた名盤」とか「幻の名盤」と言われ聴き継がれていくとは思う。それにしてもこのアルバムがリリースされたのは1999年、その後新譜がなかなか出ないなんてところも本家の真似しちゃって、もうそろそろ出してくれても良いのではないのだろうか?しかしそれ以前にグループが存在しているのかどうかも謎で、アルバムだけでなくグループ自体もそろそろ「幻」と化してしまいそうな…。

これを書いたのが5年ぐらい前だから、もうその頃からこの人たちの消息は分からなかったんだよね。一部のマニアだけのものにしておくのはもったいないアルバムだよ。ぜひオススメします。

グレイドックスレコーズのサイトで試聴ができるのでチェックしてください。

コメント

  1. jun より:


    昔発売した時に手に入れて、いいアルバムだな〜と思って聴いてました。販売が終ってたのも知らなかったんですが再発売も知りませんでした(笑)
    登場したとき「今どき、こんなアナログな…」という音やジャケットの写真に関心した覚えがあります。
    変わらなくても良いスタイルもあるんだよぁ

  2. hiroumi より:


    junさん
    自分も初めてこのアルバムを聴いたときは
    なんかアナログちっくな・・・って思ったものです。
    2枚目はいつ出るんだろうって時々検索してみたりしていたのですが
    行方もわからずもう出ないのかと思ったところにこの再発だったのです。

タイトルとURLをコピーしました