【イマコレ】ベック / Odelay

Beck / Odelay
Beck / Odelay

※イマコレ=「今ごろコレ聴いてる」「今まさにコレが俺にキテル!」的なアルバムなどをピックアップして紹介します。

01. Devil’s Haircut
02. Hotwax
03. Lord Only Knows
04. The New Pollution
05. Derelict
06. Novacane
07. Jack-Ass
08. Where It’s At
09. Minus
10. Sissyneck
11. Readymade
12. High 5 (Rock The Catskills)
13. Ramshackle
14. Diskobox

もう20年以上も前のことだが、俺はあるテープを作って遊んでいた。それは様々な曲の断片を適当に、曲間もなく繋げただけのもので、普段聴いている曲がちょっと流れてはすぐさま他の曲に変わったり、いきなりラジオの音が混ざったりと、ところどころに上書きをしたりするなど、編集自体には何の脈絡もなく、他人が聴いたらそんなものはちっとも面白いとは思わないものだ。

しかし自分で作ったそのテープで、ある種の快感を得ることができた。それは「偶然」がもたらすもので、それまでまったく関係の無かった曲同士がぶつ切りにされ、繋げられただけにも関わらず、その流れがとてもスムーズだったり、何か新しい曲に生まれ変わったかのような箇所が時々出てくるのだ。たった数秒の偶然に出くわしたくて、そんなことをやっていたものだ。

当時はパブリック・エナミーを始めとするヒップ・ホップのグループが行っていたサンプリングなどを面白がって聴いていたから、その影響も少なからずあったと思う。そして偶然を求めるだけでは満足できず、今度は「○○と××を繋げてみよう」なんて考えだしてテープを作ってはみたが、意図的にやろうとすればするほどそれは上手くいかなかった。自分が頭の中で考えていたような音はなかなかできあがらなかった。

ヒップ・ホップ以外でのサンプリング的な手法をやっているミュージシャンなんて、当時はまだなかなかいなかったが、それをロック・シーンのメジャーなフィールドでやっていたのは、恐らくベックが最初だったんじゃないだろうかと思える。俺が知らないだけかもしれないけど。

ベック・ハンセンという男の頭の中では”Odelay”収録曲のような展開はどのようにしてできたのだろうか?意図的だったのか、偶然の産物だったのか、このアルバムを聴けば聴くほどそんな疑問が出てくる。完璧すぎるサンプリングとその「編集感覚」。今ではちっとも珍しくないけど、当時の流行りや音楽シーンを思い出してみても凄いことだったと思う。このアルバムに影響を受けた人もさぞ多かったことかと。

90年代を象徴するアルバムを1枚選べと言われたら、俺は迷うことなく”Odelay”を挙げる。ロックとヒップ・ホップ、ミクスチャーとかオルタナティヴとか、いろいろなタイプの音楽があったけど、これほど完璧なものは無い。もし80年代だったらこのアルバムは間違いなく異端扱いされて、アンダーグラウンドでのカルト的名盤みたいな言われ方をしていたんじゃないかな。

サンプリングを施しながらも、楽曲はヒップ・ホップ的なものから、ベックが影響を受けたブルースやフォークなどもあったりして、俺も最初はこの音楽的ボキャブラリーの豊富さに戸惑いながらも、そんな彼の「編集感覚」や音楽のごった煮感に次第にやられていってしまった。

90年代のロックをいちばん活気付けたのはニルヴァーナなどのグランジ勢だったが、彼らの音楽を特に90年代的とは思っていない。音楽的な革命と影響力だったら間違いなくベックのほうがあると思ったし、その絶好のサンプルがこの”Odelay”というアルバムだ。

でも、結局今ではグランジ勢のほうが歴史的に語られてしまっているかな。いま聴くと、2000年以降はベックの後発がたくさんいるのかなって思うしね。

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